自分を探すな、自分をつくれ。自分探しのパラドックスとは?

昨日投稿したツイートに反響があったので「自分を探すのではなく、自分をつくる」という考え方がなぜ重要なのか、その背景について書いてみます。

うう。初のBlog投稿でドキドキする。。。

これを読んでもらえれば、自分探しで疲れ切ってしまった人や、むしろ自分がわからなくなってしまった人でも、胸がスッと楽になるような感覚を得られると思います。かつての僕がそうだったので、保証できます。

自分探しでドツボにハマった学生時代

思えば就職活動中、僕も必死になって自分探しをしていました。「自分はなにがやりたいんだろう」「何が得意なんだろう」と毎日のように悩み続け、就活対策本を買っては自己分析シートに一生懸命記入してみたり、業界Mapを買って眺めてみたり、先輩や友人に聞いてみたり。

当時の自分は「確固たる自分の軸が本当はどこかにあるはず」「まだそれを見つけられていないだけなんだ」という前提で考えていました。だからこそ、それを見つけることさえできればエントリーシートにも具体性が出てくるはずだし、志望動機も納得感のある内容が書けるだろうと思い込んでいました。

別の言い方をすると「どこかに正解があるはず」で「その正解を見つける解法」を求めていたんでしょうね。こう考えると、就職活動時点の自分のマインドは、まるで受験生の頃と変わっていない事がわかります。とても悲しいです。

ただ。。。心の奥底では気づいていたんだと思います。本当は自分なりの価値観や軸なんて持ててないし「確固たる自分」なんて存在しないということに。でも、それを認めてしまったら心が傷つくから、とてもじゃないけど耐えられそうにないから、それまで見て見ぬ振りをしていたんです。

自分がないという現実を受け入れる

そんな自分でも「とにかく働きたい」「経済的に自立したい」と願い、就職氷河期にリクルートグループに拾ってもらえたのは幸運でした。しかし、それでもいまいち仕事に身が入ってなかった自分に上司がくれたのが「自分を探すな、自分をつくれ。」という言葉でした。そして、この言葉はそれ以降、僕のモノの見方を永遠に変えてしまったのです。

きっと上司は「自分がない」という現実から逃げてフラフラしていた僕に、目の前にある役割をまずやりきってみれば、見えてくるものがあると教えてくれたんだと思います。

そして、想定外な事が起きました。上司の言葉で景色が変わり「自分がない、悲しいけどないものはないんだから仕方ない」と割り切ってみると、意外なことに心がラクになったんです。一度「今の自分はゼロなんだ」と腹をくくって、だからこそ「自分をつくっていこう」と捉え方が変わりました。

そして、今だからこそ全体の構造が見えるのですが、そもそもこれは「自分は、探せば探すほど逆にみつからない」というパラドックスに陥っているんです。当時の僕はその構造に囚われて、グルグル同じところを回っては答えの出ない日々に苦しんでいたのでした。

自分探しのパラドックス

では次に「自分は、探せば探すほど逆にみつからない」というパラドックスについて説明します。

僕は当時、まるで白いキャンバスに点を打つように「やりたいこと」を探そうとして、膨大な可能性の中で迷子になっていました。下記のようなイメージです。

でも、これは広大な砂漠の中で金を見つけるようなアプローチです。ある業界について調べて「自分に向いてるかも」と頭の中で自己洗脳しては、また諦めるということを繰り返していました。

考えてばかりで行動しないと手掛かりにも欠けるので、不毛な探索行為を繰り返した挙げ句、だんだん疲れてきます。そして、こんな事が続けば精神的に弱っていき、早く楽になりたくて就活アドバイザーや適職診断という名の占いサービスに、自分がやりたいことを決めてもらうハメになってしまいます。

最初から正解をピンポイントに探ろうとするから、非常に探索コストが高くなる。まさに、この構造こそが「やりたいことを探すほど、やりたいことが見つからなくなる」というパラドックスの正体なのです。

‪では逆に「まずは内定した企業に就職して頑張ってみる」「目の前の仕事をやり切ってみる」という方針で行動すると、どうなるでしょうか?

仕事をやりきると、結果として「他者からのフィードバック」が手に入り、そこから「得手不得手」「好き嫌い」についての手掛かりが得られます。もちろん、そこで安易に苦手と断定せず、成果が出るまで続けて欲しいのですが、自分が感じる「違和感」や「苦痛」の正体が見えてきますし、「やりたくない事」で白いキャンバスの一部を塗り潰すことが大事です。

そうすると、探索範囲が効果的に狭まり、自分が活かすべき特質や優位性も見えてきます。つまり「自分がやりたいこと」とはピンポイントに特定するものというより、逆に「苦手なことややりたくない事を明確にすることであぶり出されてくる」んです。

感性=心のセンサーの特性を利用してパラドックスを克服する

僕がこういった「やりたくないことを明確にすることで、むしろやりたいことをあぶり出す」ような逆説的アプローチをオススメするのは、人類が長い歴史の中で生き延びるため磨いてきた「感性=心のセンサー」の特性を利用した方が賢いと思うからです。

人の感性は快より不快、つまり「やりたい事」より「やりたくない事」に強く反応します。古来より身の危険を察知出来なければ死の危険があったが故に発達した能力ですし、高度に分業化された現代においても人類の身体構造は基本的に同じです。やりたい事が明確でなくても人は生きて行けますが、やりたくない事を続ければ心身に不調をきたすので、不快なことを察知する能力には目をみはるものがあります。

僕が今、結果的に「大好きで、向いていて、会社や世の中から求められていること」を仕事にして報酬を得ていられるのも、無理に自分探しをせず、自分をつくるためにこの逆説的アプローチを採用したからだと自信を持って言えます。

あれから紆余曲折ありながも、僕は自分を探すなんてことは考えず「自分をつくる」という考え方でキャリアを構築してきました(参考までに詳細プロフィールはこちら)。

ごく一部の「やりたいことが明確な人」や「自分など探す必要がない人」以外は、多すぎる可能性を効果的に縮減することで、やりたい事が見つけやすくする、探索効率を上げるアプローチについて、ぜひ考えてみてください。