「リストラに殺されない生き方(1) 再就職支援事業で目にしたもの」
「リストラに殺されない生き方(2) 自らを商品として見立てよ」
こちらの続きです。前回までの話を要約すると
・リクルート内定者時代は再就職支援事業部でアルバイトしていた
・現在と同様当時も不景気で、そこは大企業に勤める中高年のリストラを外部から請け負う事業部だった
・会社から「あなたは必要ない」と言われたリストラ対象者に欠けていたのは何か、一体どうすれば良かったのかを自分なりに考え始めた
・入社後は転職エージェント事業部配属だったので、日本中のビジネスパーソンの履歴書や求人のデータベースにアクセスして転職市場全体を俯瞰できた
・そうして得た情報を自分なりに組み立てて得た仮説は「自分自身を転職市場における”商品”と捉えるべき」というものだった
・自分を商品として見立てて価値を上げていく「マーケット感覚」とでも呼べきセンスが重要だと気づいた
ざっとこんな感じでしたね。
さて、市場とは「取引の場」であり、人材市場にはアルバイトや新卒など様々なタイプがありますが、ここでは「中途=転職」マーケットに焦点を当てます。そこで取引される「商品としての人材」。その市場価値は一体、何によって左右されるのでしょうか?
当時、毎日のように候補者の履歴書を見て気づいたことは、市場価値を年収という切り口だけで見たら「どの業界にいるか」の方が「個人として能力があるか」より変数として遥かに大きいという、残酷な真実でした。
下記のツイートでも「ソニーの30代管理職が700万、外資金融2年目が1000万なんてよくある光景でした」と書いていますが、この差は個人の能力で生まれているわけではないのです。
転職エージェント時代、年収を決める要因は ①市場自体が拡大していて②事業の収益性が高く③労働分配率が高いかどうかだとすぐに気づきました。身も蓋もない現実ですが、本人の努力は①②③に比べたらトッピングです。ソニーの30代管理職が700万、外資金融2年目が1000万なんてよくある光景でした。
— たいろー / メルカリ→スマニュー🦄 ユニコーン転職日記 (@tairo) March 22, 2020
僕はこれを「エレベーター理論」と呼んでいますが、一人の人間がいくら仕事の能力が高くても、エレベーターの中でジャンプしているような差しかありません。それより大事なのは、エレベーターが上昇中なのか、下降中なのかという環境要因です。

エレベーターの中でいくらジャンプ力を競ってもエレベーター自体が下に動いてしまえば意味がないですし、そこを無視してスキルアップ競争をしても、市場価値や年収という意味では結果がついて来ません。
大事なのは、個人の成長と、置かれている環境=市場や業界の成長をかけ算することなのです。
では、こういった構造を踏まえてどうキャリアを組み立てて行ったら良いのか?その決め手になるのが転職におけるマーケット感覚であり、求人の需要と人材の供給の関係に着目し、長期的に自分の価値を高めたり、市場価値が落ちないキャリアとは何かを考えるセンスなんです。
そして、当時の僕がこの「マーケット感覚」を意識して取った最初の戦略は「長期的に需要が増え続けるのに、供給がそれに追いつかないポジション」に、徐々に自分を移動させることでした。
リクルートグループは入社当時から超優良会社だったので「辞めるなんてもったいない」「たった3年でなぜ辞めるの」と言われましたが、転職業界の最大手から、IT業界の無名の会社に転職しました。
転職当時は年収が200万円くらい下がりましたが、中長期的に自分の価値が上がることを見越して、そこは目をつむりました。それも「マーケット感覚」があれば決断できることです。
そして、あれから15年。リーマンショックやコロナなどの紆余曲折を得ながらも、現在「いつリストラが起きても全然OK」という精神状態を手に入れることが出来ています。
なぜなら、いま会社がつぶれても、リストラされても、他にいくらでも仕事があるからです。これについては、当時の自分の決断に感謝したいと思います。
そして、「リストラに殺されない生き方」の最後の処方箋は、次回が最終回になると思うのですが、前職のメルカリでの気づきです。
次回は、個人の成長でも業界の成長でもない、リストラに殺されない生き方のための考え方について説明したいと思います。
(続く)