気が付くと、だいぶ長いこと好きなことを仕事にしてメシを食えているのですが「これって幸せなことだよな」としみじみ思うと同時に、世の中にはそうではない人が沢山いるのも事実で。

そこで今日は、少しでも多くの人がご自身の仕事に対して「自分は幸せ者だな」という実感を得られるよう、自分が一体どのようにしてそこに行き着いたのか自らの体験を振り返りつつ、何が最短ルートなのか整理してみたいと思います。‬

「好きを仕事に」に関する3大勢力とその特徴

この「好きを仕事にする」というトピックに関する人間の反応は大きく分けて3つほどあります。

  1. 本当に好きなことさえ見つかれば仕事は「自然と引き寄せられる
  2. 時代は変わった。むしろ「好きを仕事にしなければならない」し「本当に好きなことでなければ、これからの時代は生き残れない」
  3. そもそも「好きなことを仕事にすること自体がナンセンス

第1勢力は、いわゆる精神世界系や宗教系です。前提に「本当に好きなことが心のどこかにあるはず」という思想があり、前に書いた自分探しのパラドックスに陥って抜け出せなくなる可能性があります。

第2勢力は、著名人が書くビジネス本や自己啓発本です。芸能界での激しい競争やビジネスでの実践をもとに世の中の変化を敏感に感じ取っている彼らの主張は的を得ている一方、思想的には先進的なので扱いに注意が必要です。真に受けていきなり会社辞めたりする人が出そうで心配です。

第3勢力は、「好きなことを仕事にしちゃダメ」としたり顔でアドバイスをするその他大勢です。家族や友人、上司、転職アドバイザーにもいますが、彼ら自身が自分の仕事を愛しているか、誇りを持てているかを確認してみるべきです。

好き嫌いと得意不得意で整理する

それぞれの主張は全部が全部間違いではなく部分的には正しいのですが、それぞれ別の立場から物事を見ているので、話が噛み合いません。

そこで、わかりやすく整理するために、感性軸の「好き/嫌い」と、能力軸の「得意/不得意」という2つの軸でマトリックスをつくって整理してみましょう。

感性 x 能力マトリックス

右上のエリア:好きでかつ得意なこと、別名「競争優位」
左上のエリア:好きだけど不得意なこと、別名「下手の横好き」
右下のエリア:嫌いだけど得意なこと、別名「世の中のニーズ」
左下のエリア:嫌いだし不得意なこと、別名「検討外」

第1勢力は縦の赤い軸にフォーカスして横軸を無視するので、結果的に左上の「下手の横好き」エリアに人を招き入れてしまいます。そうすると、好きな業界や企業に仮に転職できたとしても年収が大幅に下がったり、能力が足りなくて会社の中で生き残っていけなくなり、そうなると好きだったはずなのにいつの間にか嫌いになってしまうという悲劇を招いてしまいます。

第2勢力は、右上の「競争優位」エリアですでに自分たちが勝負をしています。ただ、世の中の商売のニーズが「困っていること」や「自分ではやりたくから人に任せたいこと」からも生まれる以上、適用できる範囲には限りがありますし「生き残りをかけて仕事を好きにならないといけない」という強迫観念はどこか矛盾していて、人を追い込んでしまう可能性があります。

第3勢力は右下の「世の中のニーズ」エリアにフォーカスし、好き嫌いで仕事を選ぶな、好きなことで食っていけるほど世の中甘くない、むしろ好きなことを仕事にしない方がいいという考え方で、仕事は仕事と割り切っています。人が求めるニーズに応えれば仕事はあるという考え方ですが、変化のスピードが速まる中でも自分の得意領域に固執して変化に対応できなかったり、新たなスキルをひたすら学びつづける「永遠の修行僧」のような職業人生になってしまいます。

さて、では、自分の場合はどうなのかをこのマトリックスに当てはめてみます。

自分の場合

ここでは一旦「働く環境」である業界、職場の人間関係や企業カルチャーなどは一切無視して、自分の行動や動作にのみフォーカスします。要するに、判断軸は「それをしている自分が好きか嫌いか」「それは得意かそれとも不得意か」の2つだけで考えてみます。

tairoの場合

この「○○をする」という表現で、仕事でしている動作をマトリックスにプロットしてみると、こんな感じになります。

僕の場合、技術やプログラミング自体は大好きですが、細かい処理を書き連ねて正確に動作させるのは不得意な方です。

強みは「概念化」や「言語化」の能力で、プロダクト開発の現場ではそれが仕様策定やプロジェクトの推進、システムの全体像の可視化などのシーンで発揮されています。

また、1対1や少人数で話をするのは、好きだし得意な方です。インタビューの依頼が時々ありますが苦ではありません。しかし、同じ「話をする」行為とはいえ、講演など大勢の前で話をするのは好きじゃないです。できれば避けたい。

でも、皮肉なことに、嫌いなのに割と得意みたいなんですよね。。。。このmeetupのスライドも朝になるまでつくってなくて、直前の急ごしらえでした。

でも、ここがポイントなのですが、嫌いだけどやってるうちにだんだん慣れてきて、そこまで嫌いじゃなくなってきています。その割にはそこそこ得意みたいなので、人からも褒められたりして、なおさら嫌いではない仕事になってます。

つまり、場数を踏んでいくと「得意だけど嫌い」な右下のエリアから「得意でかつ好き」な右上のエリアに少しずつ移動するケースが出てくるんです。

だからこそ、右下のエリアは「能力的隠れ資産」だとも言えます。

感性x能力マトリックス

たとえば、今まさにこうして僕はブログを書いていますが、もともと文章を書くのはとても苦痛で、twitterでたまにつぶやく程度でした。でも、それすらも書けば書くほど慣れてきて、そこまで嫌いではなくなっていくのかもしれません。

以前「自分を探すな、自分をつくれ。自分探しのパラドックスとは?」で書いた「好きなこと」をいきなりピンポイントに探るのではなく「嫌いなこと」をまず明確にした方が「好きなこと」の探索効率が上がるよ、という話もここにつながっています。

ある時点で嫌いだと感じていることでも、経験してみることで明確になり、逆に「好きに転化する価値のあるもの」があぶり出されてくるからです。

そして、自分の才能を生かしてイキイキと活躍している人でも、決して好きなこと”だけ”でメシを食ってるわけじゃなくて、仕事の中には好き嫌いと得手不得手が色々と混じっているんだという構造が見えてくると思います。

逆説的ではありますが「好きなことを仕事にしているか」よりも「その仕事をしている自分を好きになれるか」が未来を決めます。たぶん恋愛と同じで「その人の事が本当に好きか」より「その人と一緒にいる時の自分が好きか」が大事なのと一緒です。

さて、今日はこの辺にしておこうと思いますが、「好きな仕事に就きたい、転職したい」と悩んでる学生やビジネスパーソンの皆さん、外出自粛要請で台無しのGWに、コーヒーでも飲みながら一度やってみてください。

また、業界や職種についての好き嫌いをどう整理するかは、また別の機会に説明したいと思います。

ではでは。