安定を捨てて転職→市場価値が安定というパラドックス

先日、無意識にこんなツイートをしたのですが。新型コロナの影響で、最近特に「精神的に安定している事の大切さ」をヒシヒシと感じるようになりました。

僕は2005年にリクルートからIT業界の名もなき会社(20名以下)に転職し、自分ではすっかり「ベンチャー志向」「安定を捨てた」気になっていたのですが。

自分は子供もいて、家のローンもあって、親を経済的に支える責任も感じています。そして、だからこそ「新型コロナの負の影響を大きく受けず」「業界が安定成長していて」「市場価値が安定している」が故に「常に仕事がある」ことにホッとしていたり、感謝しているんですよね。

そこで今日は、まさにいま「安定を捨てて転職すべきか悩んでいる」人に向けて、僕が自分の転職経験から得た「安定」に関する学びをお伝えします。

この記事を読めば「転職すべきか否か」とグルグル悩むことがなくなり、精神的に安定すると思います。

■ 安定志向は人間の本能

結論から言うと「安定志向自体は人間の本能」であり、否定できない事実です。サラリーマンだって自営業者だって、経営者だって、みんな安定したいんです。

なぜなら、これは太古の昔から人類のDNAに備わった、食料を求め続ける自己保本能です。人間でなくとも生物なら持っている普遍的な衝動であり、否定して生きることはできないですし、否定するべきでもありません。

今回の新型コロナによる外出自粛の影響は、特に自営業者や経営者など、事業リスクを負っている人たちを直撃しました。一方で、正社員はそういったリスクを負っておらず、基本的に守られた立場だと痛感した人も多いはずです。

なので「安定志向で何が悪い!」と開き直って良いと思います。

ただ、ここがポイントなのですが、「“何に”安定を求めたのか」によって転職の選択肢やその後のキャリアが大きく枝分かれし、気がついた頃には取り返しがつかない程の大きな差になってしまうのも、また事実なのです。

次に、その「安定に関する誤解」を説明します。

■ 安定と成長は矛盾しない。「安定成長」を業界と自分に同時に求めよう。

転職希望者が抱きがちなのが「自己の成長か、それとも生活の安定か」という悩みなのですが、僕は自分の経験から、これは誤解だと確信しています。

理由は簡単で「安定を捨てたからといって成長できるわけじゃない」からです。

具体例としては

  • 独立起業したはいいけど、仕事は請負で過去のスキルの繰り返。人と関わる機会も減り、出来ることの幅が広がらない。
  • 大企業からベンチャーに転職したけど、日々の売上を稼ぐのに精一杯で余裕がない。一緒に働く従業員も魅力的な人材がいない。

こういった例を挙げるとキリがありませんし、そもそも「安定」と「成長」は矛盾しないんです。

考え方を変えてみましょう。

個人的な経験から言うと「安定か成長か」の二択ではなく「景気依存か安定成長か」という軸で、まずは業界を考えた方が良いと思います。

僕の場合、あのままリクルートのHR領域で働き続けていたら今頃不安定な状況に置かれていたはずです。転職エージェント業界は景気変動にかなり依存しますからね。

15年前に僕が、リクルートからIT業界の名もなき会社に転職した時に考えていたのは、下記のようなことです。

  • ネットへの移行は長期に渡って続くので人材需要は増え続けるはず
  • 一方で、エンジニアは供給が不足し続けるはず
  • プログラミング”だけ”じゃなく、エンジニアが不得意なスキルが掛け合わせれば希少価値は上がるはず
  • そう考えると、未経験でもあるし、まずは会社はどこでも良いので「インターネットそのものに転職する」意識で行こう

そして、その考え方は間違っていなかったと思います。僕は今でも、業界と会社の成長をレバレッジにして、自分の成長に役立てようとしているからです。

まさにこれこそが「安定を捨てて成長を目指したつもりが、皮肉にも”安定成長”する業界に移籍することで、業界と自分を同時に成長させることができた」というパラドックスの正体です。

もちろん、IT業界にもコロナの影響度には濃淡はあります。こちらの(「コロナに強いIT業界に転職したいけど実際どうなの?」)でまとめたように、影響度レベル3の観光、ホテル、航空業界に関わるインターネットサービスでは深刻な需要減の影響を受けています。

先日、Airbnbに勤めている知人とZoomで話す機会があったのですが、世界的にも観光需要が激減し、特に海外からのインバウンド(訪日外国人)需要に頼っていた日本の観光業界は、この影響をモロに受けていて大変だそうです。

でも、でも、僕は彼らのことをまったく心配していません。

なぜかって?それは、彼らの市場価値が圧倒的に高いからです。

シリコンバレーで現在、多数のレイオフが発生しているのは耳に入ってきますが、同時に「またとない高度人材獲得のチャンス」とばかりに、採用を強化する別の企業がたくさんあることも事実ですからね。

まさに、この尽きることのない需要が、彼らのキャリアを安定成長させるセーフティーネットの役割を担っているのです。

■ 安定を何に求めるかのチェックポイント

ということで、最後に「安定を何に求めるのか」のチェックポイントを列挙してみました。

安定を何に求めるかチェックポイント
業界・長期的に安定した需要増が見込める
 ・少子高齢化の恩恵
 ・グローバル化の恩恵
 ・IT化/スマホ化の恩恵
・参入障壁が高い
 ・法律に守られている
 ・技術的難易度が高い
・景気に大きく依存しない
ビジネスモデル
と企業
・市場シェアが高い
・海外比率が一定以上
・ビジネスモデルの収益性は高い
・独自技術、特許を保有
・ネットワーク効果が効く
・競合他者が強くない
・経営者が優秀
・副業が可能なカルチャー
職種・収益貢献性が高い
・複数のスキルが要求される
・競合他社でも不足傾向
スキル・IT/プログラミング/データ分析
・外国語/英語
・マネジメント
・コミュニケーション
・プレゼンテーション
・資格(取得が義務付けられるもの)

改めて見てみると結局「市場はあるか」「収益性は高いか」「競合は少ないか」「当社の強みが生きるか」などなど、新規事業を企画する時の検討フォーマットにそっくりですよね。

そしてそれは、個人がサバイバルする上で、一緒だと僕は思います。なぜなら、僕も含めてあらゆる労働者は、労働市場で自分を売っているセールスパーソンなんですから。

さてさて、今日は以上です。ぜひこの土日にでも、興味がある業界や企業をこのフォーマットに当てはめて調べてみて下さい。

ありがとうございました。