「不満 が無さ過ぎて不安」は転職理由として案外正しい

2020年9月14日のvoicyの内容を文字起こししたものです。

■ えとみほさんのツイート深いね

最近、えとみほさんからお誘い頂いて、motoさんと3人で飲んだりTwitter でライブしたりして非常に楽しかったんですが、そのえとみほさんが今日、こういうツイートしてたんですね。

すごい深いなーと。そう共感できたのは、自分にも思い当たる節があるからだと思うんです。

僕の場合、「不満がなさすぎて不安になったので転職した経験」は新卒で入ったリクルートの子会社(現リクルートキャリア、旧社名リクルートエイブリック)で、転職エージェント事業を営んでいました。

正直めっちゃ良い会社で。給料もいいし、当時は未上場なので持株会で自社株も買えたんですね。結構な株を給料から天引きしてた先輩もいて、後々まとまった資産になったはず(ちなみに僕は買ってなかった。。。もったいない)

しかも、通常ボーナスとは別に、部の目標も達成すると「ゴールインボーナス(通称GIB)」といって「社員と旅行に行ったり、何かしら交流に使いなさい」という条件付きの奨励金もありました。そして、僕の退職時も余ってた有給を買い取ってくれました。どうです?すごくいい会社でしょ?

ただ。。。。ね。

僕は当時、この「不満がなさすぎて不安」で、結局転職しました。

リクルートには3年いたんですけど、最初の人事部から法人営業に異動させてもらって。営業といえばリクルートでは花形でしたし、目標も達成して、賞ももらえて、ボーナスもドカーンと頂けて。本当に不満なんて全くなかったです。

演劇のようなもので、用意された舞台で演者として気持ちよく演技をさせてもらっていたんですよ。でも、実はそこはかとない不安もあって。「俺このまま行くと、どうなっちゃうんだろう」って。

社内の出世に憧れるタイプではなかったんですが、年数が経つにつれて「課長になって、部長になってっていうキャリアを追求しなきゃいけないのかな、でもこのままいくと自分の名前で勝負できないな」と思ったんですよ。

転職支援事業っていうのは、基本的に裏方稼業というかサポーター役で。もちろん、自分の名前で勝負している人も中にはいます。例えば、僕と僕の同期を可愛がってくれていた『森本千賀子さん』。有名ヘッドハンダーですよね。でも、ああいう風にその人の名前で知れ渡っているし仕事が来るという人は、エージェントやヘッドハンターの業界には少ないんじゃないかなと。

でも、僕は「あの仕事は自分がやりました」「これ僕がつくりました」「僕が考えました」ってちゃんと言いたいし、自分の名前で仕事がしたかった。何かを自分でつくり出して世の中にぶつけてみたいなって思いつつ、それができずにいたんです。

これが「現状に不満はないのに不安」という気持ちの正体でした。

■ ゆでがえるが生まれる構造

「不満がなさすぎて不安」に象徴されるような世の中の現象を「逆接構造」っています。

不満がないからといって、それを続けたら成長が止まってしまい、その快適な状態(コンフォートゾーン)から出られなくなる。快適すぎて、快適な状況から逃れられなくなるんです。そして、ある日とんでもなく「不愉快な状態」に陥ってしまうという、皮肉なことになるわけです。

別の言い方だと「ゆでガエル」ですね。

ぬるま湯に浸かっていると麻痺してしまい、外の世界の変化が感じられないんですよ。いきなり熱くなれば飛び出て逃げられるんですけど、ちょっとずつ熱くなっていったら死んじゃうんですよね。

なので、えとみほさんの「不何一つ不満はなくて、逆に不満なさすぎて不安になって辞めたという謎の退職だった。でも、今振り返ればあの時の自分の不安は正しくて、あのままずっと同じ仕事をしていたら今頃いつ会社に捨てられるかビクビクしながら働いていたと思う」っていうのは、結果的に直感は正しかったっていうことなんですよ。

そしてこの逆説構造って、本当によく現れる現象で。転職やキャリア、働き方を考える上でも重要な概念です。

例えば、他にどんなパターンがあるかというと

  • 上司や部下に合わせようとするほど、むしろ関係性が悪化したり
  • 専門性を追い求めていたら、AIに仕事を奪われて専門性が消滅したり
  • 独立したけど、過去の焼き直しみたいな仕事ばかりで成長できなかったり

こんな感じですね。

そして僕は「人間には、逆説構造を知覚する能力が備わっている」と思っていて。現状に不満がなくても、未来に不安になってしまうんじゃないのかなと。

■ 転職エージェントで働いて感じた未来への不安

もう一度、僕の話に戻しますね。

新卒で転職エージェント事業に従事して思ったのは「収益性は高いけど景気に大きく左右されるビジネスだな」という事でした。好景気の時は儲かるんですけど、不景気になると一気に収益が悪化する。

あとは「人に転職をオススメするわりに、転職エージェントに従事する人たちってあまり転職しないんだな」と矛盾を感じてしまったり(若いね)。まあそういう商売なんで仕方ないんですけど。

その結果として、僕は「現状には不満はないけど、不安だしダメだと思うので、外の世界に出てみよう」と決断して転職しました。このときから、

「いかに人を引き抜くか?」ではなく「人から引き抜かれるような人材になるにはどうしたらいいのか?」と考えはじめました。

「欲しい人にスカウトを送ろう」ではなく「たくさんスカウトが来る人材になろう」という方向に頭の中を切り替え始めました。

そして、そのためには「転職市場に自分を晒してみるしかない」と。
そう決めて、当時自分が快適な状況をあえて崩しに行ったのでした。

なので、今貴方が同じような「不満はないけど不安を感じていたとしたら、それは案外正しいかもしれませんよ」と。今日はそういうお話でした。

ということで、今日もお話を聞いて頂きありがとうございました。

ではまた。