このツイートに、1,000リツイート、7,000いいねを越える反響がありまして。
共感してくれたビジネスパーソンの方々や、管理職として日々悩みながら奮闘する皆さんからの反響がたくさん寄せられたのでした。
そこで今日は、この「雑用係」という言葉が持つ本当の意味について、メルカリで管理職として働く中で得た学びをエピソードを交えつつ紹介したいと思います。
特に、下記のような悩みを抱えたビジネスパーソンの方は多いと思います。
・管理職の役割って一体何なんだろう?
・管理職だけど他の会社に転職するのは難しいかな?
・今の会社では管理職になれそうにないけど、転職したらなれるかな?
この記事を読むことで「管理職の本当の役割」や「管理職として活躍したり、転職するにはそういう考え方が必要なのか」という気付きを得て頂けたら嬉しいです。
■ 管理職の本当の役割とは?
管理職、中間管理職、マネージャー、マネジメント人材、経営人材など様々な言い方がありますが、ここではこれらをまとめて「管理職」と呼びます。
まず結論から言うと管理職の役割とは、
「高い成果を挙げるために」「ありとあらゆる事をする」ことです。
非常にシンプルです。拍子抜けしますよね。
でも、僕はメルカリ創業者の山田進太郎さんの口から直接この定義を聞いた時、これまで手探りで管理職として働きながら抱いていた悩みに「ああ、そういうことだったのか!」と霧が晴れるように納得したんです。
当時のメルカリ(2019年春頃)では進太郎さんが、将来経営幹部候補となるメンバーだけを集めてメルカリの経営方針や彼自身の学びをシェアする会を実験的に開催し始めており、僕も参加していたのでした。
さて、では僕はあの日、一体何に納得したんでしょうか?
そして、この「高い成果を挙げるために」「ありとあらゆる事をする」という管理職の役割が、僕のツイートにある「マネージャーは部下がパフォーマンスを最大化できるようにする雑用係」という考え方と、どうつながるのでしょうか?
次に、それについて説明します。
■ 管理職は「チームとしてやるべき」だけど「部下が苦手」な事に焦点を当てる
誤解して欲しくないのは「管理職は雑用をすべし」と言いたいわけではなくて、「高い成果を挙げるためなら、雑用も厭わないのが管理職」ということです。伝わりますかね?
わかりやすくなるよう、例によって四象限で整理してみました(最近マトリックス使って説明するのがお家芸みたいになってきたな…)。
「チームのミッションと部下の能力」マトリックス
- 右上:チームとしてやるべきで、かつ部下が得意なこと、別名「大胆な権限移譲」
- 左上:チームとしてやらないべきだけど、部下が得意なこと、別名「捨てる勇気」
- 右下:チームとしてやるべきだけど、部下が苦手なこと、別名「チームづくり」
- 左下のエリア:チームとしてやらないべきで、部下も苦手なこと、別名「無視」
右上:「大胆な権限移譲」エリア
まず、チームとしてやるべきで、かつ部下が得意なことは”大胆な”権限移乗がおすすめです。中途半端に指示したり口を挟まず、大きな方向性さえ間違っていなければ、あとはメンバーたちに判断を任せましょう。
僕は当時、メルカリの旧検索基盤を根本的に刷新し、既存の延長ではない改善を実現するべきだと考え、エンジニアたちの能力と時間をそこに集中することに決めていました。
また、当時急成長中だったメルカリでは、経営陣が驚くべき大胆さで権限移譲していく光景が見られました。具体的に言うと、
- ある日、進太郎さんから「もうこの会議出ないので任せます」とSlack
- ある日、いきなり「会議が増えてきたのでこの会議はなくしましょうか」とPMがあつまる会議体が解体
- マネージャーからプレイヤーへの異動が柔軟で頻繁に起きる(別のキャリアパスとして用意されていて報酬が大きく変わることはない前提)
こういった事がよく起きていたのが印象的でしたね。
左上:「捨てる勇気」エリア
ここは、チームとしてやるべきじゃないけど、部下が得意だったりやりたいことだから進めているような業務が該当します。
管理職はここで「何を捨てるか」を大胆に決め、その決断に至った背景と、その代わりに何を得たいのかを、部下たちに丁寧に説明する必要があります。一般的には「やること」を決めるよりも「やるべきでないこと」を特定してきちんとやめる方が、10倍難しいです。
僕の場合、新検索基盤の開発のために、旧検索基盤の改善を全面的に停止しました。短期的な成果もいくつか見込めたのですが、限りあるリソースを最大限に活用するべく、勇気を持って捨てたのでした。
右下:「チームづくり」エリア
ここのエリアは、チームとしてやるべきなのに、部下がその能力を持っていなかったり、苦手だったりする業務がすべて当てはまります。
今日のメイントピックははこのエリアのことで、大抵の場合それは「チームづくり」に関する、雑用も含めたありとあらゆることです。
採用計画策定、開発や売上のロードマップづくり、募集、面接、入社時の受け入れ、育成、チームのコミュニケーション活性化と雰囲気づくり、個々のメンバーの心のケア、人事評価、各種経費申請の承認、社内業務のリマインド、労務管理、キャリア相談、異動対応、他チームとの調整、退職交渉への応対などなど多岐に渡ります。
当時の僕がEngineering Managerとして管掌していたメルカリの検索チームは、開発規模に対して優秀な検索エンジニアが圧倒的に足りなかったので、2018年9月〜2019年2月までの半年間、僕は採用にフォーカスする決断をしたのでした。メルカリ検索チームのエピソードについては、僕のProfileにリンクをまとめてあるので、興味があればご覧下さい。
ちなみに、もしこれらが得意な部下がチームにいたら、いますぐ管理職として推薦・抜擢して権限移乗した方がいいです。僕だったらそうします。
左下:「無視」エリア
ここは言わずもがな、チームとしてやるべきじゃないし、部下も得意でないので実行能力と実行の必要性がないエリアなので無視して構いません。
上記のように、当時の自分が無意識に「管理職やマネージャーの役割ってたぶんこういうことなんだよな」と感じて取り組んでいたことが、そんなに間違っておらず、本来の役割に沿っていたということがわかったので、納得したのでした。
■ 成果を挙げる管理職の業務は常に変化していく
ということで、今日はここまでにします。
ここまで書いて気づいたのですが、結局、高い成果を挙げる管理職ほど「チームが得意なこと、できること」が増えていくので、自分個人の具体的業務はどんどん変化していくのが当たり前なのかもしれませんね。
また、短期的には実現できないけど着々と前に進めないといけない中長期的な戦略策定が管理職の仕事なのも、チームの成果を最大化するための構造がこのようになっているからなんだと思います。
最後に、これは余談なのですが。
進太郎さんは謙虚な性格なので、自分の考えを押し付けるというより、得た学びを皆と分かち合い、参加したメンバー同士が活発に議論をする場だったのが印象的でした。堅苦しさがなく「研修」という感じではなかったです。
ちなみにその後、取締役の小泉文明さんや濱田優貴さんが主催する会でも、他の管理職の皆さんと活発な議論ができて、刺激になったのを覚えてます。
優秀でやる気のある面白い人材が集まって、経営や事業についてあれこれ議論するのは、ヒリヒリもしますが非常に楽しいので、皆さんもぜひ、管理職としての毎日を楽しんでみてくださいね。
ではでは。