昨日のこの「ヤフーが戦略立案100人を副業で募集、リモートでOK」というツイートに反響があったので、今日はそれについて感じたことを書きますね。
ヤフーさん「社員もリモートで良いなら社外人材もリモートで働いてもらえるな」って気付いたっぽい。「7,000人の社員のうち95%以上が在宅」であり、10月からはリモートワークが恒久的な制度に。交通費は定期券代を廃止して実費支給。月7千円の在宅手当て。コアタイムも廃止。https://t.co/DDH1es7Lqd
— たいろー / メルカリ→スマニュー🦄 ユニコーン転職日記 (@tairo) July 15, 2020
実はこのニュース、僕はちょっと違った視点で眺めていました。
今日のこのブログを読むと「メディアでの打ち出し方と、本当の狙いは別にあったりするんだな」という気づきがあると思います。
■ ヤフーの狙いは「働き方改革」ではない
結論から言うと、これって「リモート副業募集」に見せて、実はヤフーの「企業ブランディング」であり「採用戦略」だと思うんです。
東野圭吾さんの『容疑者xの献身』という作品で「幾何の問題と見せかけて、実は代数の問題」というセリフがありましたが、まさにあれと同じ。
あの作品では「幾何(犯人)の問題と見せかけて実は代数(殺害時刻)の問題」でしたが、今回は逆で「代数(雇用形態や働く時間)の問題に見せかけて実は幾何(人材)の問題」です。
つまり、リモート副業で成果を出すというより、それをフックにして「優秀で面白い人材」に興味をもってもらい、その後プロジェクトを進めるうちに「ヤフーに転職しちゃいなよ」っていう展開を考えているのではないかと。
では、僕がなぜそう思うのか、理由を説明しますね。
■ 採用市場で「弱者」だったヤフー
日本のインターネット業界においてヤフーは最古参と言ってもよく、大企業・安定企業の代名詞です。
従って、ヤフーの企業ブランドは「保守的」「意思決定が遅い」「優秀な人材は転職してしまう」というイメージが長らく続いていました。
僕自身、2015年〜2016年にかけて、求人検索エンジンを開発するためにヤフーのオフィス(当時はミッドタウン)にしょっちゅう通っていました。
あまりに頻繁だったのでヤフー出向とまでは言い過ぎですが、ヤフーの検索エンジニアや検索品質評価チーム、Yahoo研究所の方まで幅広くお会いさせて頂き、検索システムのアーキテクチャや検索改善の考え方、自然言語処理について何度も教えて頂きました。いずれも非常に優秀な方々だったと記憶しています。
ただ、実際にお会いした皆さんが口にしていたのは、組織の大きさから来る大企業病的な動きの遅さだったり、それについての危機感でした。
結果的に、LINEやメルカリなど、過去の急成長企業や勢いのある新興スタートアップに優秀な人材を流出させてしまっていたのは事実です。
しかし、変化の速いインターネット業界では常に優秀な人材にアプローチする必要があり、ヤフーは「負のブランドイメージ」を抱えたまま、転職市場ではどちらかというと、競合に比べて劣勢だったのです。
■ スタートアップ経営陣のような決断をする巨人
ただ、最近のヤフーはそんな採用市場におけるイメージを覆そうとしています。
キャッシュレスのPayPayは破竹の勢いで人材を集めてスーパーアプリを洗練させていっています。投資フェーズと割り切っているので、大赤字でも突き進んでいます。
企業戦略としても、ZOZOを買収したと思いきや、ZホールディングスとLINEの巨大合併という大きな戦略的合意を成し遂げ、経営統合が進んでいます。
そして、2020年3月から突如現れたのが「新型コロナウイルス」であり、世の中や働き方を大きく変えるきっかけになりました。
ヤフーの”現”経営陣の多くは元スタートアップ経営者で、事業売却なども経験した彼らの得意技は「流れを読んで上手に乗る」所にあります。であるがゆえに、この「働き方のビッグウェーブ」に即座に乗るという決定を下せたんだと思います。
そして、その目的は「働き方改革」そのものというより、すっかり定着していた「働く場としてのヤフー」のブランディングのやり直しであり、イメージの刷新です。
大企業が持つ「資金力」や「ブランド力」を、スタートアップ経営者が世の中の変化を読みつつ、機転を聞かせて決断する。今のヤフーはそんな良い所取りの企業ブランドをつくり、広めようとしているんです。
■ 戦略的な施策の今後の課題
実際、今回のヤフーの打ち手は非常に秀逸だと思います。
普通の求人募集は、
- 一定の企業ブランドがないと応募が来ない
- 候補者を獲得するには莫大な広告予算を必要とする
- 書類や面接で選考するのでミスマッチが起きる
こんな感じです。ないないだらけです。
一方で、今回のヤフーの打ち出し方は
- PRで企業ブランドイメージを刷新しながら
- 求人広告予算をかけずに候補者を獲得できて
- 働きぶりを通じてヤフー側も相手を選考できる
こういう、一粒で3回くらい美味しい戦略的施策なんです。
とはいえ、ちょっとした疑問もあります。
素朴に「リモート副業の社外人材が月5時間、5万円/月で優れた戦略や事業プランを作れるのか?」という点ですね。
ただ、僕の見立てが当たっている場合、これはいわゆる「大人のインターン」という位置付けになるので、戦略策定や事業プランの確立自体は問題にはならないかもしれませんけどね。
いずれにせよ、興味がある方(僕もちょっと興味ありますw)はこちらから応募してみてください。
『ギグパートナー募集一覧』 -ヤフー株式会社 Yahoo Japan Corporation-
ということで、今日は以上です。長文読んで頂きありがとうございました。
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